大判例

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東京高等裁判所 平成2年(う)1058号 判決

主文

原判決中、被告人A、同C、同Dに関する部分を破棄する。

被告人Aを懲役二〇年に、同Cを懲役五年以上九年以下に、同Dを懲役五年以上七年以下にそれぞれ処する。

被告人A、同C、同Dに対し、原審における未決勾留日数中三五〇日をそれぞれその刑に算入する。

被告人Bに関する本件各控訴を棄却する。

理由

検察官の控訴の趣意は、東京高等検察庁検察官樋田誠が提出した控訴趣意書(東京地方検察庁検察官北島敬介作成名義)に、これに対する答弁は、被告人のAの弁護人近藤文子、同神谷信行、被告人Bの弁護人羽賀千栄子、同伊藤芳朗、同大沼和子、同菅野庄一、被告人Cの弁護人荒木雅晃、同岡慎一、同吉村清人、同黒岩哲彦、被告人Dの弁護人清水勉、同田中裕之がそれぞれ連名で提出した各答弁書に、被告人Bの弁護人の控訴の趣意は、同被告人の弁護人羽賀千栄子、同伊藤芳朗、同大沼和子、同菅野庄一が、被告人Cの弁護人の控訴の趣意は、同被告人の弁護人荒木雅晃、同岡慎一、同吉村清人、同黒岩哲彦が、それぞれ連名で提出した各控訴趣意書に、これに対する答弁は、東京高等検察庁検察官樋田誠が提出した各答弁書に、それぞれ記載されたとおりであるから、これらを引用する。

第一  検察官並びに被告人B及び同Cの各弁護人の各控訴趣意

一  被告人Cの弁護人の事実誤認の主張

所論は、要するに、以下のように主張し、原判決には事実誤認がある、というのである。

1  原判示第一の(1)関係

(1) 原判決は、被告人らが原判示の下の公園に移動した後、被告人Cにおいて、甲(以下、単に「被害者」ということがある。)を猥褻目的で略取、監禁しようと企てた被告人Aらの意図を察知し、自室を監禁場所に提供することを承諾した旨判示し、被告人Cについて、右時点で被告人Aらとの間で、甲に対する略取、監禁の共謀が成立したものと認定しているが、被告人Cは、右の段階で、甲の監禁場所を自室とすることを承諾したことも、他の被告人らとの共謀に関与したこともないのに、原判決は、被告人A、同Bらの原審公判供述の評価を誤り、殊に、甲の監禁場所の決定が被告人Aと同Bの間でなされたことを否定ないし緩和しようとしてなされた疑いが強く、信用性のない被告人Bの供述を採用するなどして、前記のように認定したものであるから、原判決には事実誤認がある。

(2) 原判決は、被告人ら四名全員で、甲を被告人Cの居室に連行した旨判示するが、被告人Cは、同被告人方居室へ甲を連行した行為には関与していないのに、原判決は、信用性の低い被告人Bの原審公判供述や、別の日の出来事と混同した疑いの強いEの検察官に対する供述調書の該当部分を採用するなどして、前記のように認定したものであるから、原判決には事実誤認がある。

2  原判示第二関係

原判決は、被告人Cの甲に対する未必の殺意を認定したが、同被告人には、甲に対する殺意はなかったものである。すなわち、

(1) 原判決は、一月四日の甲に対する暴行について、当初行われた暴行は、いじめの一態様として前月下旬ころまで甲に加えられた暴行と意図において変わりがなく、暴行開始の当初から、被告人らに対し未必の殺意を認めることはできないとしながら、被告人C及び同Bについて、同被告人らが、甲に対して、その存在を否定する方向での気持ちが高まって、甲への強い攻撃性・排斥感をみなぎらせ、当日の、常識では考えられない犯行に及んだと判示して、同被告人らが、暴行開始の時点でも、未必的殺意発生につながるような潜在的殺意ともいうべき心理状態にあったとし、これを暴行途中での未必の殺意発生を認定する一根拠とするのであるが、被告人Cは、甲に対する暴行の当初から、そのような特別の排斥感などを抱いていたものではなく、当日の暴行は、被告人Aが、賭け麻雀で大敗し、むしゃくしゃした気持ちを甲へのいじめによって晴らそうとしたことから始まったもので、被告人Cは個々の場面では積極的行動をとっているものの、それは被告人Aの指示ないし主導の下に行われた、集団的暴行の雰囲気に引き込まれたものに過ぎず、原判決の前記認定は誤りである。

(2) また、原判決は、当日の暴行が、常識では考えられないものであり、被告人Cにおいても、甲に対して執拗かつ強度の暴行を加えているとして、これを同被告人に対する未必の殺意認定の一根拠とするが、当日の暴行も、その一つ一つは甲に対するいじめとしてなされたもので、その以前の暴行と質的に異なるものでなく、原判決の重視する鉄球付き鉄棒による暴行も甲の大腿部に加えられており、原判決のように、暴行の執拗さだけから殺意を認定することはできない。

(3) また、原判決は、被告人Cらが、甲の生存に配慮をせず、かつ、その死に無関心な態度を取り続けたことを未必の殺意認定の一根拠とするが、それは、同被告人において、甲が死亡するなどということがおよそ念頭になかったということを示すものであり、無関心な態度それ自体を殺意認定の根拠とすることは誤りである。

(4) 原判決は、当日の暴行の程度は、甲の当時の衰弱度に照らすと、死の危険を招来する高度の蓋然性を有していたもので、一連の事態の推移を目の当たりにし、自らも、終始、積極的に加担した被告人C及び同Bにおいては、このまま暴行を加え続ければ、甲が死んでしまうかも知れないとの考えが生ずるに至ったものと推認するのに矛盾はない旨認定し、右認定を正当化する根拠として、「本件では、被害者の衰弱度や死に至るかも知れないことへの認識の甘さ・希薄さが目立つけれども、目前の事実そのものを知覚していることに変りはなく、ただ、その事実の持つ心的な意味や、事実間の意味ある結び付きを切り離すという、自我の無意識な働きがあったもので、右のような心理的な事態は、成人の犯罪においても程度の差こそあれ生じるもので(中略)、意識障害等の異常が一切認められない被告人らにとって、殺意を否定する根拠とはならない」と判示しているが、右は、被害者の衰弱度や死の危険性についての、被告人Cらの認識状況の希薄さを一方で認定しつつ、なお、殺意を認定しようとして、証拠に基づかない特異な論理に依拠するものであり、被告人Cは、その発達過程において、人の死の危険性についての合理的な判断能力を形成しえていなかったため、被害者が死に至る危険な状態にあるという事実そのものを認識していなかったのであるから、同被告人に対して、原判決の論理は当てはまらない。

(5) 原判決は、被害者が、不意に転倒して室内のステレオにぶつかり、痙攣を起こすなどした時点で、被告人らにおいて、このまま暴行を加え続ければ、甲が死亡するに至るかもしれないことを認識したと判示しているが、被告人Cは、甲の右転倒を仮病だと考え、その旨発言したことは、同被告人が原審公判でも一貫して供述しているところであり、原判決も、同被告人が右の際「仮病だ」と言った旨認定し、これを無責任な説明と評価している。同被告人は、甲の転倒を仮病と考え、だからこそそのように発言したのであり、同被告人が、右の時点で甲に対する未必の殺意をもった、との原判決の認定は誤りである。

以上のとおり、原判決には、判決に影響を及ぼすことの明らかな事実誤認がある。

二  検察官の量刑不当の主張

所論は、要するに、以下のように主張する。

原判決は、被告人Aを懲役一七年に、同Bを懲役五年以上一〇年以下に、同Cを懲役四年以上六年以下に、同Dを懲役三年以上四年以下にそれぞれ処する旨の判決を言い渡したが、原判決の量刑は、著しく軽過ぎて不当である。すなわち、

1  被告人らは、本件各犯行当時は、いずれも少年であったものであるが、少年に対し、刑事責任を追及し、刑罰を科する場合、いかなる科刑をなすべきかについて検討すると、少年法においては、少年の保護、福祉という観点から、犯人に対し社会復帰の機会をできるだけ与えるべきことや、刑の教育的、矯正的意義が強調され、死刑、無期刑の緩和、相対的不定期刑の特則等が設けられている。しかし、罪を犯した少年の年齢、資質、前科、前歴、当該犯罪の罪質、動機、手段、方法の執拗性、残虐性、被害者及び遺族の感情等を総合し、少年の保護、福祉の要請よりも、社会秩序維持の要請を優先させるべき場合にまで、犯人が少年であることの故のみをもって、一律に寛刑を科さなければならないとする理由はない。本件のような場合は、事件の重大性、凶悪残忍性、非人道性を直視し、犯人の責任に応じた厳罰をもって臨むことこそ社会正義を実現する所以であり、少年法が、少年に対して死刑や無期刑を科する余地を認めているのは、このような考え方に基づくものというべきである。

少年に対する保護優先主義、寛刑主義の考え方は、行き過ぎると、少年に対し法軽視の風潮をもたらし、社会秩序の維持に回復し難い弊害をもたらすおそれが大きく、一般予防の見地から憂慮すべき事態を招くことになる。

本件は、少年の健全育成の側面よりも、本来の刑事責任の追及に重きを置くべき事案であるのに、原判決は、少年法の一般的原理を強調するあまり、社会秩序維持の要請を軽視し、検察官の求刑を大幅に下回る刑を言い渡したもので、量刑についての姿勢に基本的な誤りを犯している。

2  本件各犯行は、いずれも犯情極めて悪質であるが、とりわけ、甲に対する猥褻誘拐・略取、監禁、強姦、殺人、死体遺棄等の一連の犯行は、稀に見る重大かつ凶悪な犯罪で、その残虐さ極悪非道さは、過去にも類例を見出だし難い。

甲に対する右一連の犯行は、被告人A、同Cが、強姦目的で女性を物色し、たまたま通りかかった甲を拉致し、被告人ら共謀のうえ、甲を略取して強姦し、暴行、凌辱を加え、犯行発覚を恐れて長期間監禁し、遂にその処置に困り自己保身のため殺害し、死体をコンクリート詰めにして遺棄したもので、その動機は極めて反社会的、自己中心的なものであり、その犯行態様も、甲に対し多数回にわたり常軌を逸した暴行、凌辱等を加えた、極めて残虐かつ執拗、冷酷なもので、そこには人間性のかけらも見られない。結果はもとよりまことに重大であり、被害者に責められるべき落ち度は全くなく、一七歳という春秋に富む時期に、被告人らに残虐非道の仕打ちを受けて惨殺された無念さは測り知れない。また、被害者の両親ら遺族の被害感情は極めて強く、検察官の求刑と原判決の量刑を知って、「裁判は自分達とは関係のないところで行われている。到底承服できない」と訴え、司法制度全体に対して、深い不信感、絶望感を抱いているのである。また、本件が社会に与えた影響も極めて深刻である。

被告人A、同Bらの犯した他の二件の強姦の各犯行も、事前に共謀して計画的になされた通り魔的犯行で、暴力団員の用いるような脅迫文言を申し向けたり、果物ナイフ、繰り小刀を突き付けるなどして、被害者らの反抗を抑圧して輪姦し、被害者らに深刻な精神的、肉体的苦痛を与えるなど、その犯情は極めて悪質であり、しかも、そのうち一件は、甲を監禁して暴虐の限りを尽くし、甲が衰弱しきった段階で敢行されたもので、被告人Aらは、一方で甲を弄びながら、他方で、更に新たな被害者を物色して輪姦したのであり、ここにも、同被告人らの人間性を欠如した自己中心的態度が顕著に現れている。

被告人A、同BらによるFに対する傷害事件も、動機において全く酌量の余地がなく、犯行態様も一歩間違えれば、生命を奪うおそれのある危険なもので、その犯情は極めて悪質であり、傷害の結果も重く、しかも、右犯行は甲殺害の直後になされたものであって、ここにも、同被告人らの根深い粗暴性を看取することができる。

被告人A、同B、同Cらによる窃盗事件は、無為徒食していた同被告人らが、金銭に窮するや、次々と窃盗の犯行に及んでいたもので、その態様も、深夜における侵入盗や、バイクに乗って通行人の携帯物をひったくるという危険なもので、窃盗額も多額に上っており、その犯情は悪質である。

3  原判決は甲に対する事犯の全般的な情状評価を誤っている。

(1) 原判決は、被告人らが、「当初からこれほどまでの監禁を意図していたものではなく、計画性のない、場当たり的な犯行が発端となっている」と判示している。しかし、被告人らは、自らの獣欲を満たすため、被害者に対するリンチと輪姦を企図したものであり、当初から相当の期間監禁することを見込んでいたと認められるうえ、甲を帰宅させる意思のないまま長期間、甲の自由を拘束した点を重視すべきである。

また、その態様は、被告人A及び同Cにおいて、強姦の被害者となるべき女性を物色して帰宅途中の甲を発見し、被告人らが意思を通じあって、甲を被告人C方に閉じ込め、リンチや姦淫の行為に及んだ、極めて巧妙なもので、計画性がないとか、場当たり的犯行であるなどとは到底いえない。

(2) 原判決は、また、被告人らが、甲を監禁後、「暴行を加え続けることにより、深刻・異常な事態への心理的抵抗感が緩んで暴行が増長され、結果として甲を帰す方法に窮し、ずるずると監禁が長期に及ぶにしたがって、抜け道のない状態に陥った」旨判示している。

しかし、被告人らは、そもそも見ず知らずの女性を拉致し、強姦等を行い、凌辱行為に及ぶことに、何ら抵抗感を有していなかったばかりか、もともと自己以外の者については、人としての尊厳など認めていなかったのである。原判決の右判示は、被告人らの従来からの行動や考え方を考慮に入れず、少年一般の行動様式を被告人らの本件所為に単純に当てはめた近視眼的、皮相な見方である。

被告人らは、甲をC方に拉致したが、拉致段階から、甲をある程度の期間留め置き、姦淫したり、虐待する意図であったと認められる。原判決の、結果として甲を帰す方法に窮した旨の認定は誤りであり、抜け道のない状態に陥ったとの評価も根拠に欠ける判断である。

(3) 原判決は、被告人らが、「被害者の処置に困惑し、次第に心理的閉塞感が高じ、最終段階では、いじめを主眼とする暴行の過程において、未必的な殺意が生じ、一挙に過激な攻撃行動として発散したものとみられる。その意味では、精神的に未熟な少年らが事態を打開できないまま、不幸な結末に至った側面もある」と判示する。

しかし、被告人らは、甲を監禁中、自由に他人と交わったり、強姦を行うべく、他の攻撃対象を求めていたことが認められるのであって、被告人らには、甲を助けようなどという意識は毛頭なかったのであり、心理的閉塞感が高じたと認定する根拠は薄弱である。

そして、甲が監禁されていた間の状況を見ると、昭和六三年一二月二六日ころからは、一日に牛乳二〇〇cc位を与えたのみで、同月末ころには、甲は、自分で立つことも困難で一階の便所へ行くにも数十分かけて、這って行く程に衰弱し、昭和六四年一月に入ってからは、牛乳も与えられず、栄養失調のためますますやせ細り、体力もいっそう衰えるに至ったものであるが、被告人らは、そのころ、「女のことどうする。殺して埋めるかな」「殺すならミンチがいいですよ」、「ドラム缶に入れて焼けばよい」「コンクリート詰めにして海に捨てれば警察にばれない」などと、何度も話を交わしたことが認められる。被告人らは、甲がひと思いに殺してほしいと嘆願するのを無視して、連日のように凄まじい暴行を加え、いわば、なぶり殺しにしたのであって、本件暴行をいじめとして捉えるのは筋違いである。被告人らの殺意が未必的であるからといって、被告人らに有利な情状となるものではない。本件一連の経過を見れば、その計画性、巧妙さ、狡猾さのいずれにおいても、成人の犯行に比し何ら遜色がない。本件の原因を被告人らの精神的未熟に帰し、寛刑の理由とすることは到底できない。

(4) 原判決は、「被告人らの非行性と社会からの逸脱度が急激に深化し、犯行態様が大人顔負けの残虐性を有するに至った背景には、暴力団関係者からAを介して少年らへの働きかけに起因する生活環境の悪化と、少年らのやくざ集団への傾斜・取り入れの作用も、間接的に関わっていたことがうかがえる」と判示する。

しかし、被告人らが、暴力団と関わりを持ち、露店で手伝いをしていたことが、被告人らが非行性を帯びる背景事情の一つになっていたと考えられるものの、被告人らが非行を重ねるようになったのは、なによりも被告人ら自身の責任といわざるを得ない。自己の境遇を乗り越えて成長する意欲があれば、いくらでも更生の機会があったのに、被告人らは何らの努力もしなかったのであり、その責任を他者や社会一般に転嫁することは許されない。

4  原判決の被告人らに対する量刑は、少年によって犯された、最近の同種事件の量刑に比しても極端に軽過ぎる。

被告人A、同Bについて、無期懲役を選択しなかった原判決は、同被告人らの刑責の重大性及び一般予防に配慮を欠いたことにより、他の無期懲役事件の判決に比し極端な不均衡を招来したものであり、また、原判決の被告人Cについて懲役四年以上六年以下、同Dについて懲役三年以上四年以下という量刑は、被害者側に多大な落ち度があったり、限定責任能力等の酌むべき事情が存在して、本件と全く事情を異にしながら、同程度の刑が言い渡された殺人、同未遂の事案に比して、あまりにも軽きに失する。

5  被告人らの個別的な情状を見ると、いずれも積極的に犯行に関与し、犯罪者性向が極めて強固であるなど情状悪質であるのに、原判決はその評価を誤っている。

(1) 被告人Aは、小学校時代からの素行不良者で、非行を繰り返して保護観察処分を受けるなど、保護の手がさしのべられても、これを拒絶して、暴力団構成員となり、強姦等の悪質な事件を繰り返していたもので、その悪性は根深く、矯正はほとんど不可能といってよい。同被告人は、被告人らのグループの中心的存在で、本件一連の犯行の首謀者であり、犯行に当たっても常に主導的役割を演じたもので、各犯行に見られる同被告人の残忍性、人間性の欠如、反社会的性は著しい。

原判決は、「Aには、脳の器質性の欠陥があって、行動の制御能力や性格形成に影響を与えており、これが本件犯行に直接関わっていたとまではいえないにしても、シンナーの吸入とあいまって、本件における行動選択の不適切性や、暴行のもたらす興奮や高揚が徹底的な攻撃をもたらした過程において影響を及ぼしている」と判示する。

しかし、原判決が依拠した福島章作成の鑑定書や同人の原審証言(以下「福島鑑定」という。)は、同被告人の早幼児期における脳の器質性障害を強調する余り、同被告人がシンナーを乱用したことを軽視している。福島鑑定は、「Aの特異なパーソナリティや行動パターンは脳障害である故の部分が大きい」というが、シンナー乱用は同被告人の人格形成に多大な影響を与えており、特異なパーソナリテイや行動パターンは自己が多年にわたり培ってきた結果というべきで、先天性あるいはそれに近い不可抗力的要因はさほど重くみるべきでない。原判決が量刑に当たり依拠した福島鑑定には種々の疑問がある。

また、原判決は、被告人Aの両親が私財を投げうって五〇〇〇万円を被害者の遺族に提供したとして、これを同被告人に有利な量刑事情とするが、本件が残虐極まりない重大事犯であり、遺族は、なお被告人らの厳重処罰を求めていることを考えれば、右謝罪金の支払いをもって、本来無期懲役相当の事案を有期懲役に減ずべき理由とはなりえない。

(2) 被告人Bは、小学四年生のころから級友等に暴力を振るい、高校に入学してもほとんど登校せず、一学年の一一月除籍処分になり、生活は荒れ、母に対して暴力行為に及び、昭和六三年四月に都立高校定時制へ入学したが、二か月で退学し、非行化が顕著になった。同被告人に保護処分歴がないとはいえ、本件犯行は、同被告人のこのような無反省な生活態度や自己中心的性格に深く根ざしたもので、その矯正は極めて困難である。

同被告人は、被告人らのグループでは被告人Aに次ぐナンバーツーの地位にあり、被告人Aの指示を受け、あるいは独自の判断で、被告人C、同Dなどのグループ構成員を指揮し、被告人Aの片腕的存在であった。本件各犯行は被告人Aの主導のもとに敢行されたものではあるが、甲に対する一連の犯行にあっては、同被告人から甲を誘拐した旨の連絡をうけるや、「さらっちゃいましょうよ」などと、同被告人を唆す発言をし、監禁中の凌辱についても、極めて残忍な行為を積極的に行っている。被告人Bは、被告人Aが怖かったから、同女に凌辱を加えたかのような弁解をしているが、同被告人は、被告人Aが同席していないときにも、甲が尿をこぼしたとして、被告人Cと共に、甲の顔が変形して、頬と鼻の高さが同じになるほどの暴行に及ぶなどしているのであり、被告人B自身の残忍な性格や反社会性の故に犯行に関与したものというべきである。そのうえ、同被告人は、原審公判において、誘拐のことは分からなかったとか、強姦の意思はなかった、あるいは、殺意はなかったなどと不合理な弁解をし、自己の責任を免れ、軽減するため、すべて被告人Aのせいにする主張を繰り返し、反省の情が見られない。

原判決は、「Bの未熟で偏りのある人格形成過程には、幼少時期からの両親から受容されない家庭などといった、他律的な要因が重量的に関わっており、この屈折した心理がAへの無批判な追従を促した」旨判示し、同被告人の家庭環境、成育環境等に同情すべき余地があるとの判断をし、人格形成における他律的要因や、被告人Aに対する追従を過大に評価している。しかし、家庭的に恵まれない者は社会に多数存在するが、これらの者でも社会に適合し、犯罪に走ることなく、一般社会人として立派に生活しているのが通常であり、同被告人の場合、両親が離婚しているとはいえ、その愛情を受けて成育してきたのであり、同被告人が非行に走ったのは、自らの怠惰な性格と意思の弱さに起因するのであって、原判決のように、他律的要素に責任を転嫁すべきではない。

また、原判決は、同被告人の「両親が法廷で被害者らに対する心からのお詫びの心情を述べ、金額的には僅かながら、遺族らに将来償いをする資金のため預金を継続的に開始し、今後もBを温かく支え続けることを申し出ている」と判示するが、それは、いわば親権者として当然の責務であり、しかも、右預金は原審の結審間近である平成二年五月から開始され、累計六五万円程度に過ぎない。また、両親のこれまでの同被告人に対する放任的な接し方からみると、申し出どおりの監護能力が存在するとは到底考えられない。

(3) 被告人Cは、怠惰な性格であって反社会性が顕著であり、その性格矯正には長期間を要する。同被告人は、小学校の高学年から母親に対して暴力を振るうとともに、恐喝、万引などの非行を始め、その後非行が顕著に重なっていく中で、本件犯行に至ったもので、気ままで怠惰な生活習慣が染みついている。そして、同被告人は、被告人ら四名の中では最年少であったものの、本件各犯行に積極的に関与し、甲に対する一連の行為においても、他の被告人らと共に暴虐の限りを尽くしており、その人間性の欠如は甚だしい。原判決は、「Cは、最年少であって、可塑性も年齢相応に想定されるうえ、性格的に被影響性・被暗示性が高く、A・Bに指示・影響されて過激な行動に及んだ側面もある」と判示するが、同被告人が最年少であって、被告人Aらに指示されるなどして犯行に及んだ面があることは否定できないけれども、同時に、同被告人は、自ら進んで被害者に対し暴行、凌辱を加えており、その態様も被害者の顔面が腫れ上がるまで殴打するなど凄まじいものである。また、原判決は、同被告人の「両親が陳謝の念を示している」などと判示するが、親権者としては当然のことであり、また、同被告人が家庭内暴力を経て親の監督、統制を離脱した従前の経緯からみて、両親の監護は期待し難い。

(4) 被告人Dは、怠惰な性格で、反社会性が顕著であり、中学三年時には、家庭内暴力、怠学、家出等のため、虞犯少年として保護観察処分に付されたほか、折りたたみ式ナイフの所持及び出身中学で投石し窓ガラスを割るなどしたことで不処分になった非行歴等もある。また、凶暴な性癖を有し、甲の殺害行為にも積極的に関与し、同被告人の行為が甲の死亡に大きく寄与したものと認められ、刑責は重大である。しかも、原審公判では、不合理な弁解をして自己の保身に窮々としており、反省の情が全くみられない。原判決は、「Dは一連の犯行への加担度は最も低く、精神的な未熟度が甚だしく、これは恵まれない家庭、いじめを受けながら解決策を提示しなかった学校等の他律的要因が深く関わっており、予想外の過激な攻撃も未成熟な人格に深く根づいている」と判示するが、同被告人が非行に走ったのは、怠惰な性格と根気のなさ、意思の弱さなど主として自己自身に起因するのであって、これを、家庭環境とか学校に転嫁すべきものではない。また、原判決は、母が今後の監護を誓約していることを挙げているが、同被告人は、母との接見を拒んでおり、今後とも母の監督は期待できない。

以上のとおり、原判決は、被告人らの量刑判断を誤り、不当に軽い量刑をしたものであり、到底破棄を免れない。

三  被告人Bの弁護人の量刑不当の主張

所論は、要するに、以下のように主張する。

1  少年法は、その第一条において、同法が少年の健全な育成を期するものであることを定めているが、右は、憲法二六条の教育を受ける権利の背後にある観念、すなわち国民各自が、一個の人間として、また、一市民として成長、発達し、自己の人格を完成、実現するために必要な学習をする固有の権利を有すること、特に自ら学習することのできない子どもは、その学習要求を充足するための教育を自己に施すことを、大人一般に対して要求する権利を有することなどに裏打ちされたもので、この理念は、保護処分のみでなく、少年の刑事処分においても最大限に尊重されなければならない。そのため、法は、少年の刑事事件全般について、できる限り科学的かつ教育的な考慮に基づいて事件を取り扱おうとしており、このことは、少年の刑事事件において実体面、手続面にわたり設けられている少年法、刑訴規則の諸特則に如実に表れている。したがって、少年の刑事事件における量刑に当たっては、少年の可塑性ないし教育可能性に照らし、あくまで犯罪に伴う道義的責任の範囲内において、少年の福利を重視しつつ処分を選択すべきで、行為ないし結果の重大性や社会的影響の大小によって処分を決めるべきものではない。

原判決の被告人Bに対する量刑は、右のような観点からすると、同被告人の甲に対する未必の殺意を認めたうえ、全体として同被告人の行為に最も比重をおいて量刑判断をした点において、不当なものである。

2  すなわち、原判決は、被告人Bについて、同被告人が被害者に加えた暴行を認定したうえ、暴行の過程で未必的殺意が生じたことを肯認できるとしているが、右の認定には疑問がある。すなわち、

(1) 殺意を認めるためには、殺人罪の構成要件の規範的要素として、自己の行為及びその結果、並びにその間の因果関係のすべてにつき、それが人の死を生ぜしめる危険を有していたことを認識していたことが必要であるところ、原判決は「甲にこのまま暴行を加え続ければ、死んでしまうかもしれないという考えが生ずるに至ったものと推認するのに、矛盾はなく」と判示するのみで、右の点については判断を加えていないのに等しい。

(2) 故意については、認容説が通説、判例であるのに、原判決は、被告人Bが被害者の死亡を認容していたか否かについては何ら認定しておらず、判例違反を免れない。

3  また原判決は、被告人Bが、共犯者中で被告人Aに次ぐ地位にあったと判示するが、右は、同被告人が原審公判で、「CとかDといるときは、僕がリーダーで、AがいるとAが全部決めて僕は何もしなくなる」旨供述した以上のものでなく、本件一連の犯行において、被告人Bが、ナンバーツーとして被告人Aの命令を被告人C、同Dに伝達したり、その間を、積極的に仲立ちする面があったというものではない。また、原判決は、被告人Bが、集団内における調整役を務めたとも判示するが、それは、同被告人と被告人C、同Dらが形成していた緩いグループの中に被告人Aが加わったというグループ形成の経緯に関するもので、集団内における心理的なものに過ぎず、神経症的性格構造を形成し、情性欠如を有する発達障害があり、他者への依存度が高いなどの屈折した精神状態にあった被告人Bが、共犯少年らの関係を意図的に調整することなどあり得ない。また、原判決は、被告人Bが、他の共犯少年らの模倣を誘ったとも判示するが、被告人Aが同Bを含め共犯者ら三名の模倣を誘ったというべきである。

4  原判決は、「本件の発端においては、BがAからの相談に乗った」旨判示するところ、右は、「Aがホテルからかけた電話ないし蒲原公園における会話で、Bが、女を帰さないで下さいとか、さらってしまおう、などと言った」旨の認定に符合するものであるが、右認定は、被告人Aが、被告人Bを自分と同格の立場にあったとして、本件の発端を同被告人の発言に求め、責任の半分を同被告人に負わせようとし、あえて事実を歪曲して供述したことを看過したもので、事実誤認である。

5  また、被告人Bは、本件に至るまではさしたる保護処分歴はなく、同被告人の性格上の問題点も、家族ら周囲の者が同被告人を受容することによって、改善することがほぼ確実に見込まれ、更に、同被告人は、本件後、反省を深め、人間的成長を遂げている。原判決は、同被告人の右のような個別的情状を不当に低く評価して量刑したものである。

以上の諸事情を考えれば、被告人Bを懲役五年以上一〇年以下に処した原判決の量刑は、著しく重過ぎて不当である。

なお、被告人Bは、原判決後、本件に対する反省をいっそう深化させ、規範意識を高め、被害者やその家族に対する悔悟の気持ちが深まり、他者に対する愛情が発達し、共犯少年らに対する理解が生まれ、勉学の意欲と自己洞察力も発達してきた。このことは、同被告人の弁護人に宛てた多くの書簡の内容からも明らかに看取することができる。同被告人の勉学の意欲は、同時に更生への意欲にも結び付くものである。同被告人の両親と姉は、同被告人への面会を続け、同被告人との精神的な絆を取り戻している。両親は、原判決後も、乏しい収入の中から、将来の被害弁償に備えて積み立てを続けている。同被告人の量刑に当たっては、このような、原判決後の事情を考慮されるべきである。

四  被告人Cの弁護人の量刑不当の主張

所論は、要するに、以下のように主張する。

1  少年法五五条による移送の主張

年少少年に対する刑事処分による科刑は、成人を想定した刑事施設で少年を処遇することによる弊害が少なくないところ、被告人Cの非行性が深化したのは、本件各犯行当時の数か月のことであり、それも年上の共犯者らの影響によることが大きく、また、原判決も、同被告人について、年齢に比較して著しく未熟、未分化な精神状態で、その可塑性は年齢相応に想定されるなどと判示しているように、同被告人は可塑性に富み、保護処分によって矯正することが妥当である。

同被告人は、原判示第四の二件の強姦及び第五の傷害等を内容とする非行事実により中等少年院へ送致され、その在院中に本件一連の犯行が発覚したものであるところ、原判決は、そのことを同被告人に対し刑事処分が相当である理由の一つに挙げるが、同被告人には、それまで、交通短期保護観察処分に付されたほか保護処分歴はなく、中等少年院へ送致されて二か月後に本件が発覚したのであるから、保護処分による更生が失敗したわけでもない。

原判決は、本件が凶悪、重大な事件であることを刑事処分が相当である大きな理由とするが、結果の重大性のみから、応報的な意味で刑事処分を選択することは誤りである。原判決は、また、同被告人が、監禁場所の提供等発端において重要な寄与をしたと認定するが、それが誤りであることは、事実誤認の主張の項で述べたとおりである。更に、原判決は、同被告人について、「Aの指示を受けないでBとともに積極的・能動的に著しく度を越えた暴行を繰り返した」とか、「監禁過程全般で、Bと共同して被害者に手ひどい暴行を繰り返した」等と認定しているが、同被告人は、被告人Aの指示がない場面でも、被告人Bの指示により被害者に暴行を加えたもので、単独で暴行を加えたことはない。被告人Cの暴行はあくまで被告人Aあるいは同Bの指示によってなされた追従的なものである。

また、原判決は、被告人Cについて、「殺害についての関与も重大で、被害者の気持ちを全く思いやらない無慈悲、冷淡な態度が際立っている」旨判示し、刑事処分が相当である理由の一つとする。

同被告人が、暴行の過程において、時に積極的行動をとっていることは否定できないが、それは、被告人Aの主導で行われた集団的暴行の雰囲気に引き込まれて行ったに過ぎず、被告人Cが無慈悲、冷淡な態度をとったというのも、同被告人の著しい精神的、人格的未熟性の故であることを考えると、同被告人に対しては、保護処分が相当であることが明白である。

更に、原判決が認定するように、犯行後、同被告人が、人間性に目覚めた成長を遂げ、罪の責任の自覚を深め、両親も被害者らに対する陳謝の念を示し、監督、監視の至らなかったことを反省し、同被告人と共に一生をかけての贖罪を誓っていることなど、本件犯行後の情状も考慮されなければならない。また、同被告人に対し、その行為や結果の重大性など自己の責任を自覚・涵養せしめるためにも、収容期間を弾力的に運用することができ、個別的処遇が可能である保護処分が妥当であることが明らかである。

以上要するに、少年の犯した犯罪が重いから、処分もそれに見合って重くしなければならないという考えは、少年法の目的に照らして許されず、同被告人については、保護処分が相当であり、同被告人の事件を東京家庭裁判所に移送すべきであるのに、同被告人に対し刑事処分を科した原判決には、量刑不当がある。

2  原判決の量刑が重過ぎて不当である旨の主張

原判決は、被告人Dを懲役三年以上四年以下に処しながら、同被告人より一年年少であり、可塑性に富む被告人Cを懲役四年以上六年以下に処したが、前項において述べた諸事情、とりわけ被告人Cは、あくまで追随的に犯行に及んだものであること、被告人Dとの刑の均衡などを考慮すると、被告人Cに対する原判決の量刑は、重過ぎて不当である。

なお、原判決後、同被告人の両親が贖罪のため、私財を投じて資金を捻出し、これを被害者の遺族に提供する用意をし、また、同被告人の更生のため、保護環境改善の努力を重ねていることなどを考慮されたい。

第二  当裁判所の判断

原審記録を調査し、当審における事実取調べの結果を合わせて、以下順次検討する。

一  被告人らの身上、経歴について〈中略〉

二  被告人ら相互の関係〈中略〉

三  本件一連の犯行の概要について

本件各犯行は、

1  被告人ら四名が、共謀のうえ、昭和六三年一一月二六日女子高校生甲(当時一七歳)を猥褻目的で略取し、同日から昭和六四年一月四日までの間、甲を監禁し(原判示第一の(1))、右監禁中の昭和六三年一一月二八日ころ、被告人ら四名が、G、Fと共謀のうえ、甲を強いて姦淫し(原判示第一の(2))、昭和六四年一月四日被告人ら四名が共謀のうえ、未必の殺意をもって、甲を殺害し(原判示第二)、同月五日、被告人A、同B、同Cが、Eと共謀のうえ、甲の死体を遺棄した(原判示第三)(なお、以上の甲関係の一連の犯行については、後記四に詳述する。)ほか、

2  被告人B、同Cが、Gらと共謀のうえ、昭和六三年一〇月二三日午前二時ころ、路上に駐車中の軽乗用自動車一台(時価四〇万円相当)を窃取し(原判示第六の一)、被告人A、同B、同Cが、Gと共謀のうえ、同月二六日午前零時三〇分ころ、店舗内に窓ガラスを割って入り込み、ジャンパーほか一四四点(時価合計二〇〇万五七五五円相当)を窃取し(原判示第六の二)、

3  被告人A、同Bが、Cと共に、同年一一月八日午後七時過ぎころから、被告人Aの運転する普通乗用自動車で姦淫の相手を探して走行中、午後八時ころ、自転車で帰宅途中の当時一九歳の女性を認めるや、Cと共謀のうえ、被告人Aが自車を幅寄せして自転車の進路を妨害して停止させ、被告人Bが、自転車の鍵を抜き取るなどして、同女を無理やり自車後部座席に乗せ、午後八時三〇分ころ、走行中の車内において、被告人Aが同女に対して、「大洗に行くか。それとも栃木の山奥へ行くか」「俺は最近少年院を出てきたばかりだ」などと申し向けて同女を脅迫し、その反抗を抑圧して、午後九時三〇分ころ、同女をホテルへ連れ込み、被告人A、C、被告人Bの順に強いて同女を姦淫し(原判示第四の一)、

4  いずれも甲を監禁中の、同年一二月三日午後六時ころから午後七時五分ころにかけて、被告人A、同Bが、共謀のうえ、四回にわたり、自転車で通行中の女性から、現金合計約七万二三〇〇円及び物品二七点(時価合計約四万五八〇〇円相当)をひったくり窃取し(原判示第六の三の1の(一)ないし(四))、同日午後九時三〇分ころ、被告人Aが、自転車で通行中の女性から、現金約二万六〇〇〇円及び物品六点(時価合計二〇〇〇円相当)をひったくり窃取し(原判示第六の三の2)、同月五日午後八時三五分ころから午後九時三〇分ころにかけて、被告人A、同Cが、Fと共謀のうえ、二回にわたり、自転車で通行中の女性から、現金合計約一万九〇〇〇円及び物品二七点(時価合計九一〇〇円相当)をひったくり窃取し(原判示第六の三の3の(一)、(二))、同月七日午前二時五〇分ころ、被告人A、同Bが、共謀のうえ、自転車で通行中の女性から、現金約三万円及び物品合計七点(時価約二〇〇〇円相当)をひったくり窃取し(原判示第六の三の4)、

5  同じく甲を監禁中の、同月二七日午前零時過ぎころから、被告人A、同Bが、C、Dと共に、被告人Aの運転する普通乗用自動車で、姦淫の相手を探して走行中、午前二時三〇分ころ、帰宅途中の当時一九歳の女性を認めるや、C、Dと共謀のうえ、同女を取り囲んで右自動車の後部座席に乗せ、しばらく走行した後に停車した車内において、被告人Bが繰り小刀を左手に持ち、被告人Aが果物ナイフを同女の膝付近に突き付け、「ここまで来れば分かるだろう。男と女がやることだ」「先輩に女を連れてこいと言われたので、連れて行かなければならない。それが嫌なら俺たちとやれ」などと申し向けて同女を脅迫し、その反抗を抑圧し、午前四時ころ、同女をモーテルへ連れ込み、被告人A、同B、C、Dの順に、強いて同女を姦淫し(原判示第四の二)、

6  甲の死体遺棄の犯行の翌日である、昭和六四年一月六日午後一一時ころから翌七日午前二時三〇分ころまでの間、被告人A、同Bが、Cと共謀のうえ、被告人Aらにおいて、暴力団関係者の意を受けて結成しようとしたグループに、Fが入らなかったことなどに立腹して、同人に対し、手拳や椅子等で顔面、頭部、肩部等を多数回殴打する暴行を加え、加療約四週間を要する全身打撲の傷害を負わせた(原判示第五)、

という事案である。

四  甲関係の事案の詳細について〈中略〉

五 被告人Cの弁護人の事実誤認の主張及び被告人Bの弁護人の量刑不当のうち殺意に関する主張について

1 被告人Cの弁護人の事実誤認の主張1について

関係証拠によれば、前記のとおり、被告人らが甲を猥褻目的で略取、監禁する過程で、被告人Cにおいて、自室を監禁場所として提供することを承諾し、同被告人を含む被告人ら全員が右犯行について、順次共謀を遂げたこと、被告人Cが他の被告人らと共に甲を同被告人の居室へ連行し、被害者を略取する実行行為に関与したことは、いずれも優に認めることができる。以下、若干付言する。

被告人Cは、自分は、被告人Aからの電話で被告人B、同Dらと約束の待ち合わせ場所へ赴き、甲を伴った被告人Aと一緒になったが、その後、友人から借りて乗っていた原動機付自転車を返しに行き、そこで酒を飲むなどし、その後の記憶ははっきりしないけれども、そのまま他の被告人らのもとへは戻らなかった。翌朝一〇時ころかに、自宅へ戻ったら、甲が自分の居室にいたなどと供述する。

しかし、前記のとおり、そもそも、被告人Cは、同Aの指示を受け、自転車で帰宅途中の甲を自転車もろとも蹴飛ばして本件に発端から関与し、その際は、いったん被告人Aと別れたものの、他の被告人らと自室でたむろしている際、被告人Aから電話がかかったときには、同被告人が未だ甲を確保していることを知って、被告人B、同Dと同様、被告人Aが自分たちに甲をあてがい、姦淫させてくれるのではないかという期待を抱いて、被告人Aとの待ち合わせ場所に赴いているのであって、その後、甲が被告人Cの居室へ連行されるまでの過程で、被告人Cが事の成り行きを見極めようともせず、他の被告人らや甲と別れて別行動をとり、自宅へも直ぐに戻らなかったということ自体、甚だ不自然であり、当夜の一連の事態の推移、その過程で同被告人の果たした役割、そもそも甲の連行場所が、同被告人自身の居室であることなどの事実に加え、被告人A、同Bらの各原審公判供述中の関係部分、Eの検察官に対する供述調書を含む原判決挙示の関係証拠を合わせ考えれば、甲が被告人Cの自室に連行されるまでの間に、被告人らのたまり場になっていた右自室へ甲を略取、監禁することについて、被告人Cと他の被告人らとの間で合意、了解がなされ、被告人Cが他の被告人らと共に甲を自室へ連れ込んだことはこれを認めるに十分であり、右に沿わない被告人Cの関係各供述部分は信用することができないから、原判決に所論の事実誤認があるとはいえない。論旨は理由がない。

2 被告人Cの弁護人の事実誤認の主張2及び被告人Bの弁護人の量刑不当のうち殺意に関する主張について

関係証拠によれば、前記のとおり、被告人C、同Bにおいて、被告人A、同Dと共謀のうえ、甲に対し、未必の殺意をもって原判示の暴行を加え、甲を殺害したものであることは、優にこれを認めることができる。以下、若干付言する。

(1) 関係証拠によれば、前記のとおり、甲は、昭和六四年一月四日以前の段階で長期間にわたり監禁され、その間に、被告人らから度重なる強度の暴行を受けて顔面、手足等多数箇所に受傷し、前年の一二月中旬ころからは、食物も満足に与えられなかったことや、衰弱に伴う食欲の減退等により、極端な栄養障害に陥り、同月下旬ころには、自力で階下の便所へ行くことも困難な程で、極度の衰弱状態に陥っていたことが明らかである。

(2) そして、昭和六四年一月四日当日、被告人らは、前記のように極度の衰弱状態にあった甲に対し、顔面等を多数回にわたり手拳で殴打したり、回し蹴りしたりし、更に、顔面、腹部、大腿部等をビニール袋で覆った手拳で殴打し、足蹴りするなどし、前記のような重量のある鉄球で大腿部等を力まかせに多数回にわたり殴打し、揮発性油を大腿部等に注ぎ、ライターで火を点けるなどの暴行を加えているところ、その間、甲は、被告人らの加害行為に対し殆ど反応を示さなくなり、被告人らのなすがままになっていたこと、右暴行は、約二時間にわたり、何ら手加減することなく行われた強度のものであることが認められ、前記のように、甲が、すでに極度の衰弱状態にあったこと、執拗で凄まじい暴行の態様、これに対する甲の反応振りなどの諸状況に照らせば、被告人らの右暴行の過程で、甲が客観的に生命の危殆に瀕する状況に陥ったことが明らかである。

(3) ところで、右のような暴行が行われている過程で、被告人らにおいて、甲の死の危険を認識するに至ったことは、被告人らが捜査段階で共通して供述しているところであり、被告人Aの原審公判供述によれば、右暴行の終りころ、及び右暴行終了の直後、被告人らが連れだってサウナへ出かける途中、被告人Aが、しきりに他の被告人らに対し、甲が死ぬのではないかと話していたことも認められる。右各供述は、前記のような客観的状況に沿い、極めて自然で合理的なものであり、十分信用することができる。

そして、本件の経緯から考えて、被告人らに、右一連の暴行の当初の段階から、甲に対する具体的な殺意があったとは認められないが、暴行を継続する過程で、遅くとも、被告人B、同Cにおいて、甲の顔面を回し蹴りし、甲が倒れると無理やり引き起こして更に蹴りつけるなどした際、甲が何ら身を守ろうとしないうえ、不意に転倒して室内のステレオにぶつかり痙攣を起こすなどした段階では、被告人らにおいて、甲の死の危険を認識するに至ったものと認めるに十分であるところ、被告人らがその後も、甲の死の危険を顧慮することなく、あえて、甲に対し、執拗、強度の暴行を加え続けたことが明らかで、被告人C、同Bを含む被告人らが、意思相通じて、甲に対し未必の殺意をもって原判示の暴行を加え、甲を殺害したことに疑いを容れる余地はない。

(4) 被告人Cの弁護人は、同被告人は、その発達過程において人の死の危険性についての合理的判断能力を形成し得ていなかったため、被害者が死に至る危険な状態にあるという事実そのものを認識していなかったなどと主張する。しかし、同被告人が、精神的に未成熟であることが認められるとはいえ、同被告人の知能は平均よりやや低い程度で格別問題はなく、これまでに非行や問題行動があるとはいえ、それなりに社会生活を送ってきた同被告人の事実認識の能力そのものが格段に劣る訳ではなく、同被告人が、前記の客観的諸状況を認識しながら、甲の死の危険を認識し得なかったとは到底認められない。その他、同被告人の弁護人は、原判決の判示部分の一部をとらえて、種々論難するけれども、いずれも理由がなく、採用することはできない。

(5) 被告人Bの弁護人は、原判決は、故意について認容説をとっていないなどとして、原判決には判例違反があるというのであるが、原判決は、「罪となるべき事実」の第二において、「被告人ら四名は、このまま暴行を加え続ければあるいは甲が死亡するに至るかもしれないことを認識しながら」「あえて」その後も、原判示のとおりの暴行を加えた旨判示し、被告人らにおいて、被害者が死亡するに至るかもしれないことを認識し、かつ、これを認容していたことを明確に判示しているのであり、所論は原判決の判示部分の一部をとらえ、原判決を論難するものに過ぎない。同被告人の弁護人の殺意に関するその他の所論を検討しても、原判決の認定に誤りはなく、所論は採用の限りではない。

以上のとおり、論旨はいずれも理由がない。

六 検察官並びに被告人Bの弁護人(ただし、殺意に関する主張部分を除く。)及び同Cの弁護人の各量刑不当の主張について

1 少年犯罪と刑事処罰のあり方について

(1)  被告人らは、本件各犯行当時、被告人Aにおいて一八歳、同Bにおいて一七歳、同Cにおいて一五歳ないし一六歳、同Dにおいて一六歳ないし一七歳で、いずれも少年であったものであり、被告人C、同Dは、現段階においても、未だ少年である。

(2)  そこで、所論の当否を検討するに先立ち、ここで、現に少年であり、あるいは、犯行当時少年であったものに対する刑事処罰のあり方について、当裁判所の見解を示しておくこととする。

まず、少年については、その健全な育成を期し、非行のある少年に対して性格の矯正及び環境の調整に関する保護処分を行うとともに、少年の刑事事件について特別の措置を講ずること等を目的として少年法が設けられ(同法一条)、犯罪少年は、すべて家庭裁判所の調査、審判に付されたうえ、原則として保護処分をもってその教化改善を図ることとされているが、調査又は審判の結果、死刑、懲役又は禁錮にあたる罪の事件について、その罪質及び情状に照らして刑事処分を相当と認めるときは、家庭裁判所は、これを検察官に送致すべきものとされ(同法二〇条、二三条)、検察官は、右のようにして送致を受けた事件について、公訴を提起するに足りる犯罪の嫌疑があると思料するときは、公訴を提起しなければならないものとされている。

そして、その結果、少年に対し刑事処分をもって臨むのが相当とされる場合であっても、死刑、無期刑の緩和(同法五一条)、不定期刑の採用(同法五二条)など、成人事件とは異なる特別の規定が設けられており、また、検察官に送致のうえ、刑事裁判所に公訴が提起された場合であっても、少年の被告人を保護処分に付するのが相当であると認めるときは、事件を家庭裁判所に移送しなければならないものとされている(同法五五条)など種々の配慮がなされており、少年の刑事事件の審理、量刑に当たっては、これらの点を慎重かつ十分に考慮しなければならない。

少年犯罪に関する手続構造は、以上のとおりであるが、このことは、少年に対しては、成人に比べて、常に、一律に軽い量刑をもって臨めば足りるということを意味する訳のものではない。犯罪の内容が重大、悪質で、法的安全、社会秩序維持の見地や、一般社会の健全な正義感情の面から、厳しい処罰が要請され、また、被害者の処罰感情が強く、それが、いたずらな恣意によるものではなく、十分首肯できるような場合には、それに応じた科刑がなされることが、社会正義を実現させる所以であり(少年法も、前記のとおり、罪を犯すとき一八歳に満たない者に対する死刑、無期刑の緩和を定めながら、罪を犯すとき一八歳以上の者に対しては、そのような緩和規定を設けていない。)、そこにも犯罪少年の処遇を国の司法機関である裁判所に委ねた大きな意義があるものといわなければならない。

これを看過して、少年に対し、以上の諸観点から遊離した著しい寛刑をもって臨むのは、一般社会の刑事司法に対する信頼を揺るがせるばかりでなく、少年に対し、自己の罪責を軽視させ、いたずらに刑事処分に対する弛緩した意識を抱かせるなど、少年自身の更正のためにも適当とは思われない。また、刑罰といえども、一般予防的、応報的側面ばかりでなく、受刑者の教化改善、更正を図ることが重要な目的とされているのであって、当該少年の特性を配慮しつつ、事案にふさわしく社会感情にも適合した量刑がなされ、その執行を進める中で、少年に自己の罪責に対する反省と社会の一員としての自覚を促し、改善更生に努めさせることは、広く少年法の理念に沿う所以でもある。

少年犯罪に対する刑事処分の量刑に当たっては、以上のような諸点を考慮したうえで、少年の未熟性、可塑性などその特性にも適切な考慮を加えつつ、事案の程度、内容等と均衡のとれた科刑がなされるよう特段の配慮がなされるべきである。

なお、ここで付言しておくと、以上に述べたところは、少年法二〇条、二三条の検察官送致、並びに同法五五条の家庭裁判所への移送を決定するに当たっての相当性判断の基準についても妥当するものというべきである。したがって、少年については、保護処分によっては矯正の見込みがないと考えられる場合にのみ刑事処分に委ねるべきであり、およそ保護が可能である限り刑事処分を避けて保護処分を採るべきであるとする見解には賛同できない。

以下においては、このような観点にたって、原判決の被告人らに対する量刑の当否について検討する。

2 被告人らに共通する情状について

本件一連の犯行の概要及び甲関係の事案の詳細は、先に三、四で判示したとおりであり、被告人らは、前記のとおり、被告人Aを中核とする非行集団を形成し、被告人ら全員又はその一部の者が、時に他の不良仲間も加わるなどして共謀のうえ、もしくは単独で、昭和六三年一〇月下旬から昭和六四年一月上旬にかけて本件各犯行を重ねたものであるが、ここで、各事犯において被告人らにおおむね共通する情状について検討する。

(1)  甲関係の犯行の情状について

甲に対する猥褻目的略取、監禁、強姦、殺人、死体遺棄の事犯の内容は、先に四において見たとおりで、甲の監禁中、被告人らによりなされた輪姦の犯行や、甲に対する暴行、凌辱の数々の所為は、常軌を逸した異常、残忍、凶悪なもので、徹底的に甲を辱めて打ち興ずるなど、そこには人間性のかけらも見られない。

更に、甲殺害当日の犯行は、被告人らの度重なる暴行により、すでに、顔面は腫れ上がって変形し、火傷は多数箇所にわたって膿み爛れるなどし、食物もほとんど与えられないまま、衰弱しきって終日ただ横臥しているのみの状態にあった甲に対し、被告人Aを中心に、あたかも、被告人らが互いに、その残忍、凶悪さを競い合うかのように、約二時間にわたり、執拗かつ強度の凄まじい暴行を加え続け、未必の殺意をもって甲を殺害したもので、その凄惨な犯行状況には、慄然とした思いを抱かずにはいられない。そして、甲が死亡するや、犯行発覚を免れるため、その死体をコンクリート詰めにするという異常な方法で空地に投棄するなど(ただし、被告人Dは、右死体遺棄の犯行には関与していない。)、被告人らの本件一連の犯行には、甲の人間としての尊厳に対する一片の配慮をも窺うことができない。

被告人らは、甲を猥褻目的で略取してから殺害するまで、四〇日間にわたって被告人Cの居室に監禁したものであるが、被告人らが、このように長期にわたる監禁を意図していたものではないとしても、被告人らのたまり場になっていた被告人C方に、甲を連行して監禁するという犯行態様それ自体、及びその後の事態の推移に照らすと、そもそも、当初の段階において、甲を早期に解放するという考えが、被告人らにあったとは認められない。また、監禁が長期化したのは、甲を解放することにより、犯行が発覚することを恐れ、更には甲の傷が重くなり衰弱が進んだためその処置に窮した結果であるという面があるとしても、それは被告人らの手前勝手な事情というべきである。そのうえ、被告人らは、甲に対する女性としての興味を失った後も、ただ単に甲の自由を拘束していたというのではなく、被告人らの暴行、虐待等により、顔面が腫れあがり、火傷は膿み爛れるなど、醜く変った甲を疎ましい存在と考えて、日常会話の中で、甲の死やその死体処理の話を交わすなどしつつ、更に執拗、冷酷、残虐極まりない暴行、凌辱を加え続け、ついに甲を殺害しているのであり、その間の経過に、被告人らに同情すべき点があるとは思われない。

また、被告人Aが、暴力団関係者と接近し、他の被告人らも被告人Aを介して暴力団関係者と関わりを持つに至ったことが、被告人らの生活環境を悪化させ、その非行性をいっそう深化させたものと認められるけれども、たやすく暴力団関係者に接近し、あるいは、その働きかけに応じて感化された被告人ら自身の責任も見過ごすことができない。

そして、被告人らが、犯行時いずれも少年であり、その資質、生育歴、家庭環境等から、成熟度において劣るものがあったこと、甲に対する暴行、凌辱は、このような被告人らが、集団心理も加わって、互の行為に刺激され、影響され、虚勢を張り合って、とりわけ激しいものになったという面があること、更には、世上に氾濫する、乱れた性風俗や、殺伐な人命軽視の場面を興味本位に扱った、低俗で刺激的なマスメディアの諸情報に、被告人らが無批判に汚染されていたであろうことなどが認められるけれども、これらを理由として、その罪責を大幅に軽減するのが相当であるとは認め難い。

(2)  甲の遺族の被害感情等について

甲の両親は、昭和六三年一一月二五日以降、甲が帰宅しないまま連絡もないため、同月二七日警察へ捜索願いを出し、以後甲の無事を祈り続けたものであるが、この間、被告人Aらは、同年一一月末から一二月一六日ころにかけて、三回にわたり、甲に、「家出しているんだから捜索願いを出さないで」とか、「捜索願いを取り下げて」などという電話を自宅にかけさせ、甲の所在を捜索されるのを阻止しようとし、また、そのころ、被告人Cの母は、たまたま自宅に甲がいるのを知って、甲方へ偽名で電話したが、甲の両親は、右偽名を頼りに諸所へ電話をかけるなどしたものの徒労に終り、やがて、甲の所在についてこれといった手掛かりもなくなり、心痛の日々を送っていた。そして、平成元年三月二九日、甲の死体が入れられたドラム缶がようやく発見されるに至り、翌三〇日父が検分した際には、甲の死体は、腐敗して、すでに親でさえ、直ちに甲と判別しがたいほどに変わり果てていた。甲の母は、悲嘆の余り、病に倒れ、今日においても、なお神経科に通院加療を続けている状況である。

手塩にかけて育て上げてきた一人娘を卒然として手許から取り上げられ、不安焦躁に居たたまれない長い日々を送らされた挙句、無惨にも甲を殺害されるに至った両親ら遺族の被害感情は、極めて厳しく、被告人らに対し、激しく厳罰を求めており、甲の父は、当審証言においても、被告人らに対する原判決の科刑は余りにも軽過ぎるとして、強い不信と不満の情を切々と吐露している。甲は、被害当時、卒業を間近にした高校三年生で、すでに就職も内定し、将来への夢をふくらませていたものであるが、本件について、何らの落ち度もなく、たまたまアルバイト先からの帰宅途中、被告人Aに目をつけられたことから、事件に巻き込まれ、被告人らから長期間監禁され、堪え難い数々の暴行、凌辱を受け、遂に、凶悪、無残な犯行の犠牲になり、春秋に富む若い生命を絶たれたもので、まことに、あわれというほかなく、甲自身の無念さはもとより、両親ら遺族の心情は察するに余りがあり、その被害感情の厳しさは十分に理解することができる。

(3) 甲関係以外の犯行の情状について

甲関係以外の各犯行は、被告人Aについて、甲に対する各犯行の前後及びその犯行中になされた強姦二件、傷害一件、窃盗九件(うち、店舗荒らし一件、ひったくり八件)の事犯、被告人Bについて、同じく強姦二件、傷害一件、窃盗七件(うち、自動車盗一件、店舗荒らし一件、ひったくり五件)の事犯、被告人Cについて甲に対する各犯行の前及びその犯行中になされた窃盗四件(うち、自動車盗一件、店舗荒らし一件、ひったくり二件。ただし、同被告人は強姦二件、傷害一件の犯行にも共犯として関与しているが、すでに家庭裁判所の審判を経ているため、訴因とされていない。)の事犯である(被告人Dは強姦一件の犯行に共犯として関与しているが、すでに家庭裁判所の審判を経ているため、訴因とされていない。)。

これらの犯行は、被告人Aが、単独でした窃盗一件(ひったくり)のほかは、それぞれの被告人が他の被告人や不良仲間らと共謀のうえ敢行したものである。

各犯行の概要は、前記三記載のとおりであるが、当時一九歳の女性二人に対する各強姦の犯行は、被告人Aが運転する自動車で、姦淫の相手を物色しながら走行し、右被害者らを認めるや、無理やり右自動車に乗せ、脅し文句を並べたり、繰り小刀や果物ナイフを突き付けるなどして、その反抗を抑圧してホテルやモーテルへ連れ込み、被告人らや共犯者で順次輪姦したという、相手の人格を全く無視した、自己本位の計画的で凶悪な犯行であり、各被害者に与えた心身の傷痕は深く、この二件の強姦事件だけをとっても、その犯情は極めて悪質である。

傷害の犯行は、被害者が被告人らの不良仲間であるが、被告人Aが暴力団関係者から唆されて結成しようとした極青会なる下部組織に、被害者が加入しなかったこと等に立腹し、被告人らが共同して被害者に対し、三時間余にわたり、一方的に執拗で手酷い暴行を加え、加療約四週間を要する全身打撲の傷害を負わせ、更に、被害者に「一〇〇万円で許してください。それができない場合は荒川へ入ります」などという誓約書を書かせたりして荒川に連れ出し、厳冬の川中へ入らせるなどのリンチを加えたもので、動機、態様とも悪質で、これまた、犯情は甚だよくない。

各窃盗の犯行中、店舗荒らしの事犯は夜間の侵入盗で、被害額も時価合計二〇〇万円余の多額であり、ひったくりの事犯は、夜間通行中の女性を対象に、バイクを運転して近づき、その所持品を奪い取るという強盗まがいの大胆かつ危険なもので、しかも、連続的に犯行に及ぶなど、これら各事犯の犯情も悪質といわなければならない。

(4)  本件の社会的影響について

本件が、不良仲間の少年らによって犯された、女子高校生に対する猥褻目的略取、監禁、強姦、殺人、死体遺棄等の事件で、大都会の住宅密集地の少年の居室内に長期間にわたって被害者を監禁し、暴行、凌辱をほしいままにした挙句に殺害したという、犯行態様において、凄惨、残忍を極め、そのうえ、死体をコンクリート詰めにして投棄するなど、常軌を逸した異常かつ重大な事犯であったことから、世人の大きな注目と関心を集め、これが一般社会に与えた衝撃は極めて深刻で、その影響も甚大であり、本件量刑に当たっては、この点についても十分な配慮を要するものといわなければならない。

3 被告人らの個別的情状及び被告人Cの弁護人の家庭裁判所への移送の主張について

(1)  被告人Aについて

被告人Aは、被告人ら四名中の最年長者であり、本件一連の犯行について、終始、主導的地位にあったもので、甲関係の各犯行にあっては、自転車で帰宅途中の甲を認めるや、被告人Cに指示して、甲を自転車もろとも蹴飛ばさせ、犯行の発端を作り、甲をホテルに連れ込んで姦淫した後、被告人らのたまり場になっていたC方へ電話して、他の被告人らを呼び出し、意思相通じて甲を猥褻目的でC方へ略取して監禁し、他の被告人らや不良仲間に甲を姦淫させようと企てて、甲に対する輪姦の犯行に及び、以後甲に対する手酷い暴行、凌辱の所為を主導的、積極的に行い、凌辱行為の方法の多くも、被告人Aが案出し、甲殺害の犯行も、その発端は、同被告人が、麻雀に大敗した欝憤ばらしに、甲をいじめようと考えたことから始まったものである。

その犯行態様が常軌を逸した異常かつ残忍なものであることは前記のとおりであるが、被告人Aは、右犯行の中心となり、自ら、あるいは他の被告人らを指示するなどして、積極的、主導的に犯行を遂行しており、死体遺棄の犯行も、被告人Aが中心になって遂行したものである。その他、甲関係の事犯と前後し、あるいは甲の監禁を続けている間に、被告人Aによってなされた強姦、傷害、窃盗等の各犯行についても、同被告人が主導的にこれを遂行しているのであり、同被告人の果たした役割、犯行態様、その危険性、被害者に与えた衝撃の程度、全体の犯行回数等を考えると、甲関係の各犯行と併せ、同被告人の犯情は甚だ悪質である。そして、同被告人のこれまでの非行歴、暴力団関係者への接近状況、同被告人が、他の被告人らや不良仲間らに与えた影響などをも考えると、同被告人の罪責は、極めて重大であり、被告人四名の中でも、ひときわ抜きんでているというほかはない。

なお、証人福島章の原審公判供述、同人作成の鑑定書によれば、被告人Aには、脳の器質的障害(早幼児期脳障害)があり、それが、同被告人の人格の偏りに影響を与えていることが窺われるけれども、すでに、前記一の1で見たとおり、同被告人は、中学時代には、柔道に打ち込んで、優れた成績をあげ、格別の問題行動もなく三年間の中学生活を送り、また、本件一連の犯行が始まる三箇月位前まで、タイル工業所で働いていた約一年間余は、真面目な働き振りを雇主からも評価されている程であって、その他これまでの生活歴から窺われるところによれば、同被告人に脳の器質的障害があったとしても、同被告人自身の自主的な努力によってこれを克服し、正常な社会生活を送っている時期が多々あるのであるから、同被告人に脳の器質的障害があることを過大視するのは相当ではない。

他面、関係証拠によれば、同被告人は、昭和六三年夏ころないし遅くとも一〇月ころから、シンナーを盛んに吸引するようになり、幻覚などの中毒症状がでて、本件犯行後の平成元年一月一二日足立区内の病院で受診し、シンナー中毒と診断され、服薬治療を受けていること、同被告人がシンナーの吸引を止めた後においても、なお、幻覚が消失しなかったことなどが認められ、同被告人のシンナー中毒の症状はかなり重かったことが窺われるのであって、本件各犯行の直ぐ前から始まった同被告人のシンナー吸引が、人格水準の低下を招き、本件一連の犯行に影響を及ぼしたことも否定することはできない。

一方、同被告人の両親が、五〇〇〇万円を贖罪のため甲の遺族に提供したこと、強姦の被害者中一名及び傷害の被害者との間で示談が成立していること、同被告人が本件を深く反省し、弁護人の熱意を込めた厳しい指導を受け、文通、面会、読書、写経等を通じ、原判決後もいっそう内省を深め、人間的成長の跡が相当に窺えることなど、同被告人のため斟酌できる事情もある。

(2)  被告人Bについて

被告人Bは、前記のとおり、被告人らの非行集団内における力関係では、被告人Aに次ぐ立場にあったことが認められる。同被告人の弁護人は、原判決のその旨の判示部分を論難するけれども、関係証拠によれば、前記のように、そもそも、被告人らの非行集団が形成される過程で、被告人Aが右集団に加わる前は、被告人Bが、被告人Cや同Dに対して優位な立場にあり、集団内で中心的存在であったことが認められ、被告人Aが、右非行集団に加わった後においても、被告人Bが、被告人C、同Dらに対する関係では、従前と同様の立場にあったことは、本件一連の犯行遂行過程における被告人Bの言動、その果たした役割等からもこれを窺うに十分であり、被告人B自身も、原審公判において、被告人Aがいないところでは、自分がリーダーということになる旨供述し、集団内で被告人Aに次ぐ立場にあったことを自認しており、他の被告人らも、同様、これを窺わせる供述をしているのであって、原判決の判示に誤りがあるとは認められない。

また、被告人Bの弁護人は、甲に対する一連の犯行の発端において、被告人Bが被告人Aの相談に乗ったことはなく、同被告人に対し原判決の認定するようなことも言っていないというが、関係証拠によれば、前記四の1で判示したとおり、被告人Bが、被告人Aに対して積極的に被害者を略取することを提案したことなどもこれを認めるに十分であり、以上の認定に沿わない被告人Bの原審公判供述は採用できない。

そして、本件一連の犯行において、被告人Aが、終始、主導的、中心的立場にあって行動したことは明らかであるが、被告人Bも、甲に対する各犯行において、被告人Aのいない場面でも、前認定のとおり、被告人Cらと共に、甲に対し、積極的に強度で執拗な暴行に及んでおり、被告人Bが、被告人Aに追従してした暴行、凌辱の数々も、やむなく被告人Aの指示に従ったというようなものではなく、自ら積極的な攻撃に及んでいるのであって、手加減をした節などは窺われない。

被告人Bが、甲関係の事犯において果たした役割、犯行の内容、同事犯の悪質重大性などのほか、前記のとおり、被告人Bが、右以外の事犯においても、被告人Aらと、悪質な二件の強姦及び傷害の各犯行に加わり、そこでも同被告人に次いで犯行遂行上において重要な役割を果たしていること、更に、前記ひったくり等の窃盗事犯を重ねていることなどを総合して考えると、被告人Bの罪責は、被告人Aに次いで重大である。

一方、強姦の被害者中一名及び傷害の被害者との間で示談が成立していること、被告人Bの両親は、原判決後も、引き続き甲の遺族に対する賠償金の積み立てを続け、現在では一六一万円余に達していること(遺族は、現段階ではその受領を拒絶している。)、同被告人が、本件を深く反省し、原判決後も、弁護人の熱心な指導を受けて、勉学、読書、写経などを続け、いっそう内省を深め、成長の跡が相当に窺えることなど、同被告人のため斟酌できる事情もある。

(3)  被告人Cについて(家庭裁判所への移送の主張に対する判断を含む。)

被告人Cの弁護人は、同被告人については、原判決を破棄したうえ、家庭裁判所へ移送して、保護処分に付するのが相当であるとして、種々の主張をする。

そこで、検討すると、すでに詳述したとおり、被告人Cの関与した各犯行中にあっても、甲に対する一連の猥褻目的略取、監禁、強姦、殺人、死体遺棄の事犯は、常軌を逸した悪質重大な犯行であり、その社会的影響は甚だ大きく、また、被害者の遺族の被害感情は極めて強く、現段階においても、全くそれが癒されていない。そして、右一連の犯行においては、被告人Aが、他の被告人らに指示するなどして主導的にこれを遂行したことは、前判示のとおりであるが、被告人Cにおいても、単に被告人Aに指示されて、不本意ながら、これに従っていたというのではなく、被告人Bと同様に、自ら積極的に犯行に関与し、被告人Aのいない場面においても、被害者に対し、手加減なく強度の暴行を加えているのであって、被告人Cの罪責は重大といわなければならない。しかも、先に見たように、同被告人は、小学校当時から、恐喝、万引きなどの非行が始まり、以後その非行は収まらず、家庭内暴力、怠学等を重ね、本件当時、同被告人の居室は非行集団のたまり場となり、被害者に対する監禁、強姦、殺人等の犯行の場となったのであって、これに対する両親の監督も全く及ばない状況であったのである。

少年犯罪と刑事処罰のあり方について先に述べたところを踏まえて、これらの状況を考えると、同被告人が、被告人らの中で最年少であり、本件犯行当時一五歳ないし一六歳であったことなどを考慮しても、同被告人について、保護処分が相当であるとは到底認められず、所論は失当である。

被告人Cについての、個別的情状は、右所論に対する判断中で記載したとおりであるが、原判決後、同被告人の両親が、自宅を売却し、その中から一〇〇〇万円を甲の遺族への賠償金として提供するため積み立てていること(遺族は、現段階ではその受領を拒絶している。)、同被告人が本件を反省し、原判決後も弁護人の熱心な指導等により、内省を深め、勉学、読書、短歌などを通じて自省の日を送り、成長の跡が相当に窺えることなど、同被告人のため斟酌できる事情もある。

(4)  被告人Dについて

被告人Dは、甲に対する一連の犯行(ただし、死体遺棄の犯行を除く。)について、他の被告人らに比べれば、加担度は低く、いずれかといえば、追従的であったことが認められるけれども、おおむね、右各犯行に終始関与し、監禁中の見張り役をしばしば受け持ち、甲に対する強姦の犯行の際には、甲姦淫の実行行為に及んでおり、更に、甲殺害の犯行の際には、前認定のとおり、素手では、血で汚れるとして、ビニール袋で覆った手拳で甲の腹部、腰部などを力まかせに多数回殴打したり、他の被告人らに倣って、前記鉄球で甲の大腿部等を多数回殴打したり、右鉄球を肩の高さから甲の腹部目がけて落下させるなどの凄まじい暴行に及ぶなどしている。

また、同被告人には、前記のとおり、家庭内暴力等の虞犯事件により保護観察に付されたり、その後も、虞犯や暴力行為等処罰に関する法律違反の非行により二回不処分とされるなどの非行歴があり、その生活態度も著しく不良であったことが認められる。

一方、同被告人は、本件当時一六歳ないし一七歳で、被告人Cに次いで年少であり、社会性の乏しさや未熟さがみられること、弁護人の努力もあって、現在では本件をそれなりに反省し、自戒している状況が窺われるなど、同被告人のため斟酌できる事情もある。

4 被告人らに対する量刑について

(1)  まず、先に、3の(3)において、被告人Cの弁護人の所論について判断したとおり、同被告人を保護処分に付するのは相当でなく、また、被告人Dについても、これまで判示した諸事情を考慮すると、被告人Cと同様、保護処分に付するのが相当とは到底認められない。

(2)  そこで、次に、原判決の被告人らに対する量刑の当否について検討する。先に詳述した甲に対する一連の犯行の常軌を逸した悪質・重大性、各被告人の果たした役割、加害行為の態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響の大きさ、その他記録に表れた一切の状況、被告人A、同Cについては、右のほか、それぞれその関与した犯行の犯情の悪質性、その他の諸般の事情を総合して考えると、前記の被告人らのために斟酌できるすべての情状を十分考慮してみても、被告人Aを懲役一七年に、同Cを懲役四年以上六年以下に、同Dを懲役三年以上四年以下に処した原判決の量刑は、著しく軽過ぎて不当である。

しかしながら、被告人Bについては、先に述べたとおり、同被告人の犯情も極めて悪質で、その罪責は重大であるが、被告人Bと同Aとでは、犯情において明らかな差があり、被告人Bのために酌量できる前記の諸情状をも合わせ考慮すると、同被告人について、無期懲役刑を選択して処断するのは相当でない。同被告人に対し、有期懲役刑を選択したうえ、少年法五二条により、長期、短期とも少年に対する有期懲役刑の最高刑である懲役五年以上一〇年以下に処した原判決の量刑はやむを得ないもので、これが著しく軽過ぎて不当であるとはいえないとともに、重過ぎるともいえない(なお、被告人Bは、現在は、成人に達しているが、原判決の当否を審査することを目的とする当審としては、原判決言い渡しの時点を基準としてその当否を判断しなければならず、また、原判決を破棄しなければ明らかに正義に反するような原判決後の事情も存在しない。)。したがって、被告人A、同C、同Dについての検察官の論旨はいずれも理由があるが、被告人Bについての検察官の論旨及び被告人B、同Cの各弁護人の論旨は、いずれも理由がない。

よって、刑訴法三九七条一項、三八一条により、原判決中、被告人A、同C、同Dに関する部分を破棄し、同法四〇〇条但書を適用して、更に判決することとし、同法三九六条により、原判決中、被告人Bに関する本件各控訴を棄却することとする。

七  被告人A、同C、同Dに関する自判

被告人A、同C、同Dにつき、原判決が認定した罪となるべき事実に、原判決が適用した法令(ただし、原判決五〇丁裏六行目及び七行目に「同法六〇条、二〇四条、罰金等臨時措置法三条一項一号」とある部分は、「同法六〇条、平成三年法律第三一号による改正前の刑法二〇四条、罰金等臨時措置法三条一項一号(刑法六条、一〇条による。)」と改める。)を適用し(なお、原判決五一丁裏四行目に「被告人Dの判示第一ないし第三」とある部分は「被告人Dの判示第一、第二」の誤記と認める。)、原判決と同様の科刑上一罪の処理、刑種の選択、併合罪の加重をした刑期の範囲内で、なお、被告人C、同Dは少年であるから、少年法五二条に従い、同被告人らをそれぞれ主文掲記の刑に処することとし(被告人Aについて、無期懲役刑をもって処断するのが相当と考える余地もないとはいえないけれども、同被告人のため斟酌できる前記の諸情状を考慮すると、現段階で、同被告人に無期懲役刑を科するのは、なお躊躇せざるを得ず、同被告人については、有期懲役刑を選択したうえ、その処断刑の最上限である懲役二〇年に処するのが相当である。)、刑法二一条を適用して、被告人A、同C、同Dに対し、原審における未決勾留日数中三五〇日をそれぞれその刑に算入し、被告人A、同Cの原審における訴訟費用、被告人Dの原審及び当審における訴訟費用は、刑訴法一八一条一項但書を適用して、同被告人らに負担させないこととする。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 柳瀨隆次 裁判官 宮嶋英世 裁判官 中野保昭)

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